昭和初期の国文学者・折口信夫氏によると、日本語の表現のベースには「対偶欲求」というものが存在し、短歌・旋頭歌という形も、その対偶欲求性が繰り返されることで、作り出されているそうです。 たとえば、 かみのほくらも はしだてのままに (垂仁記) と…
「悪文の構造」の著者、千早耿一郎氏は、言葉には「2つの働き」があるとまず意識することが、文章を書くときの心構えとして有益だと説かれています。 「文章のもつ2つの働き」とも言い変えられますが、まず第1は、事実や意思(客観的)を伝達する働きです…
主体(動作主)を中心とした論理的な表現にこだわらないのが日本語の特徴です。 主体不在の状況の推移を順次述べていき、最後に述語でまとめ上げるというのがその表現法になります。つまり、存在文ですね。 「病院で予防注射をしてきた」「美容院に行ってカ…
古くから地元の人たちに愛され続ける中華料理店、それは、町中華と呼ばれています。 町に育てられた味が人を呼び、また、お店に反映して、その町独特の味が形作られていく。 通い続けた店がなくなっても、あの味をもう一度食べたいと求める「味覚」は人々の…
文の主語と述語を結ぶ役割をはたす品詞は、「コピュラ」と呼ばれています。 もともとはラテン語で「連結」という意味ですが、文法用語として扱われるようになりました。 日本語でいうと、「だ」「です」「である」「だろう」。英語の場合は、「be動詞(am.…
前回の記事でスキーマという外枠概念について紹介しました。それは認知心理学の鍵概念で、ある事柄についての枠組みとなる知識のことなんですね。 現在自分が置かれている状況で何が大事な情報なのかを判断し、取得選択するときのカギとなるのが、このスキー…
認知心理学の中核となる概念は「スキーマ」と呼ばれています。 スキーマは「知識のスキーマ」ともいうべきもので、多くの場合、自分が持っていることを意識することのない知識です。 たとえば3歳の幼児にふたつの「お絵かき」を見せるとします。 ①(ぬいぐ…
英文法にはあるけれど、国文法では取り扱われないのが「関係詞」で、日本語の品詞に「関係詞」は存在しません。 「関係詞」というのは、関係節で修飾される内容を、前で受ける役割を持つ英単語のことです。 「when」とか「where」といった単語のことで、先に…
好きな俳優の声も聴きたいので洋画を字幕版でしか見ないという友人は、画面、字幕、画面と、目で追うのが忙しくて、といいます。 私はもっぱら、配信コンテンツでアメリカ映画を見るときは日本語の吹替え版。 最近の吹替は細部にわたりズレが調整されている…
配信コンテンツで30年前のドラマ「太平記」を見始めたら止まらなくなってきました。 足利尊氏の生涯を通じて、鎌倉幕府の滅亡から室町幕府の成立までの流れがよくわかり学ぶことができる。ちょうど、同じNHKドラマの「鎌倉殿の13人」の100年後くら…
日本のバブル経済の崩壊は、1990年1月の株価暴落から始まり、一般的に1991年2月頃に景気後退へ転じたといわれています。 哲夫さんが求人情報誌「ドーダ」を発行・販売する「求人センター」に入社したのは、まさにこの頃です。 彼が求人掲載の依頼を受けるた…
まだ午前中だというのに、うだるような暑さのなか、哲夫さんは自転車を走らせながら担当エリア内で営業活動に勤しんでいました。 自転車は、90年代当時、銀行員や保険のセールスが街を巡回するときにによく使っていた「大車輪」というゴツイ車種でした。 …
時は90年代のはじめ、哲夫さんが勤務する「求人センター・ミナミ支社」は大阪・心斎橋のビル街の一角にありました。 哲夫さんが所属する営業部の主力商品は求人情報誌「ドーダ」の紙面広告。 その掲載枠を企業や商店に1ページでも多く販売することが営業…
画商を生業としていた私が都内のある百貨店で個展を開催したときに、作品を何点かお求めになり、それ以来親しくして頂いた社長さんがいました。 その社長さんは哲夫さんという方なのですが、若いころ、今とは全く畑違いの求人情報誌の広告営業を大阪でされて…
あれから15年の日々が過ぎました。震災があった3月11日、私は東京で働いていて、絵画の買い付けや画廊での販売という画商の仕事を生業としていました。 その日は中途半端に仕事の空き時間ができたので、何線だったのかまでは憶えていないのですが電車で…
体言と体言、つまり名詞と名詞を繋ぎ合わせるのが接続助詞「の」という助詞の役割です。 意外と意識されていないのですが、この「の」が持つ職能は相当なもので、ふたつの名詞をつなげる強力な接着剤と言い変えることが出来ます。 「色の白い花。」という言…
日本の近代文学に多大な影響を及ぼした、明治を代表する文学者の一人、正岡子規。 俳句、短歌の革新運動を進め写生論を提唱しました。 子規は「叙事文」という文章論で次のように述べています。 文章の面白さにも様々あれども、古文雅語などを用いて言葉のか…
名詞にくっつく助詞には、「が」「を」「に」といった格助詞や、「は」「も」「さえ」といった係助詞などがよく使われます。 単独では活用せず、くっつくことで文法機能を付与したり、一定の意義を加えたりすることがその役割りです。 格助詞と係助詞では、…
文を書くときに意識したいのが、やはり、その文構造の「区切り」です。 複文の構成は主に3つからなっていて、連用修飾、連体修飾、引用節といったところがよく使われます。 連体修飾節ならその先に主名詞の存在があり、連用修飾節なら用言述語が途中で待ち…
あらかじめ、述語に対する書き手の気持ちを示すことで、文の内容の方向性を示す役割を持つ品詞を、文法用語で「誘導副詞」と呼びます。 「せっかく」「あんがい」「とうぜん」「あいにく」「もう」「ずいぶん」「さすが」といったように、誘導副詞は文頭に出…
レポートや論文といった論説文タイプの文章は、具体的な事実の部分と書き手の意見・主張という部分に大きく分けることができます。 多くの場合、根拠となる具体的事実を材料として、書き手がそこで伝えたい主張を解説していくという構成になっています。 個…
文章を読み進めていて、「ん?」と、1回で文が読み取れないことがあります。 ひと文が長くて、なかなか述語にたどり着けない場合によく見られるのですが、たいていそれは、長い連体修飾節が挟み込んで書かれていることが多いのです。 たとえば、次の例文は…
なんだか読みづらいけれど、我慢して読み続けるとひとつの味わいがでてくる。そういうタイプの文章は、ある意味「悪文」と呼ばれます。 もちろん、そこには独特の魅力があるわけで、それはそれで、一個の文体となっています。 そんな読みごたえのある「悪文…
主人公の心理描写と外界の情景描写をつなぎ合わせるために、主体の表現位置を明確に示す。 それが小説物語を展開していく上で最も有効的な手法だいうことをこれまで学んできました。 主体の自己位置が表現され、外界はそれとの関係において表現される。その…
ある名詞の内容を豊かにするために、名詞の前に埋め込まれた節を連体修飾節と呼びます。 たとえば、 Ⓐ私は、3年前に海岸沿いの小さな街で律子と出会った。 という動詞文から派生するのが、 Ⓑ私が3年前に海岸沿いの小さな街で出会った律子。 という「律子」…
文の集合体である「文章」。それは、大きくふたつのタイプに分けることができます。 まず、ひとつは描写型の文章で、小説やエッセイなどに典型的に見られることが多く、ある場面のなかで誰かの視点をとおして描かれていくという特徴を持つ形になります。 も…
今回も、文章における「主体の表現位置」について考察していきたいと思います。 表現主体の自己位置を厳密に示すことによって、その作品の世界観は読者にスムーズに伝わる、というのがこれまでに見てきた論理でした。 わかりやすく見るために、ひとりの学生…
「詞」と「辞」の関係、それは、「客」と「主」という関係に言い変えることができます。 「詞」は「主体」の向こう側にあり、「辞」は「詞」のこちら側にあります。 そこには、あちらとこちらという相関関係があるんですね。 たとえば、斎藤茂吉の短歌で見て…
今回も文章読本「ことばの藝術」を手引きにし、「表現主体の位置」について、さらに深く掘り下げていきたいと思います。 ときは明治初期、「言文一致」という、言語表現の変革の嵐が吹き荒れました。 「言文一致」、つまり、話すように書いて言と文を一致さ…
文章構成の本質は、その対比構造のありように潜在しているのだということをこのブログでは繰り返し述べてきました。 「詞」と「辞」、「客体」と「主体」、「事柄」と「陳述」、「ます」と「です」といったように、その相対するふたつの関係が文章を構成し、…