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まちがいだらけの日本語文法  達意の文章が書けるようになるために① 

今回、ご紹介する一冊は、名古屋大学名誉教授・町田健さんの著書「まちがいだらけの日本語文法」です。

町田さんによると、私たちが中学校などで教えられる「国文法」とか「学校文法」という授業内容において、記述の中身が不正確なことがあるだけでなく、説明についても納得できない場合がかなり多く見られるといいます。

本来、文法とは、私たちが文章で伝えたい内容を、正確にそして効率的に理解してもらうための便利で役に立つ知識を教えてくれるもののはずです。

ですが、現行の学校文法は、教科書や参考書に書いてある項目を高校受験のために仕方なくずらずらと暗記するだけのものになってしまっているらしいのです。

ようするに、文全体が表す意味の読み取り方や、文に内在する構成過程の法則を理解させるための考慮が成されていないということなんですね。

本書では、国文法でよく出題される問答を取り上げ、町田さんが納得いかないその問題点を指摘し、どうすれば解決できるのかが説かれています。

まさに「こういうことだったのか!」と、日本語の文が持つ仕組みが理解できる非常に有益な一冊です。

日本語の動詞はなぜ活用するのか

学生時代の文法学習といえば、多くの人が動詞の活用形を思い出されるのではないでしょうか。「か・き・く・く・け・け」という、あの活用形です。

しばらく我慢して読み進めていただきたいのですが、動詞の活用は大きく分けて二種類あり、それが「五段活用」と「一段活用」になります。

そして、活用形の種類は「未然形」「連用形」「終止形」「連体形」「仮定形」「命令形」の六つがあり、たとえば「折る」という動詞の場合は「折らない、折ろう、折ります、折る、折るとき、折れば、折れ」のように活用させます。

授業では、「どの活用形がどの名前なのか暗記しろ」などと言われるためゲンナリしてしまって、やはり、この段階で文法が大嫌いになる生徒は多いそうなんですね。

ここさえ理解すれば達意の文章を書くことが出来るようになれる、約束する、という授業なら、生徒たちも必ず興味を持って聞き入ってくるはずです。

呪文のような活用パターンを無理やり押し込むだけでは、何を質問していいのかさえわからないのではないでしょうか。

ですが町田さんによると、動詞が活用することだけを教えるのではなく、日本語の動詞が活用する「本当のしくみ」を教えることによって、これは解決できるそうです。

では、「本当のしくみ」とはどういうことなのでしょうか。

その答えは、日本語の動詞はどうしてこんな活用をするのかと、考えることによって解きあかすことができます。

例えば中国語とかべトナム語のような言語だと動詞は全く活用しません。

英語の動詞も、ほんの少しの活用形があるぐらいで、日本語の動詞の活用のように、これほど多種に渡って語尾の形を変えていく言語ではないんですね。

前提としてまずその大きな違いは、日本語という言語は中国語や英語とは異なり、単語をずらずらと並べくっつけることのできる「膠着語(こうちゃくご)」だということです。

「走らされかけていたようだった」のように、動詞のあとにいくつもの単語を並べて長く詳細な表現をすることができるのです。

「走る」ではなく、「走ら」や「走り」というように表現されていると、読み手は、文がそこで終わるのではなく、あとに名詞以外の単語が続いてくるだろうと予測することができます。

特に「走ら」だと、あとに続くのは一番多いのが「ない」で、それ以外には「せる」か「れる」が続くだろうと瞬時に判断するんですね。

では、日本語の動詞に活用がないとどうなるか。そう、「走るされるられるかけるようだた」のような形になって、まったく理解不能となります。

「走る」で終わったかと思うと次に「される」が来て、ここで終わったかと思えばさらに「られる」が来るという具合に思考回路のなかで何度も修正を余技なくされるのです。

そうなんです、日本語では述語が最後に来てやっと文全体の意味が把握できる仕組みになっていますので、活用がなかったら、もの凄く非効率になってしまうわけなんです。

つまり、活用形というのは、文が表す事柄を理解する過程の効率性を高める働きをしているのだと、町田さんは説かれているんですね。