文章表現
そこに「場面」をともなうか 日本語の表現のひとつに、受身、または受動態と呼ばれている文法カテゴリーがあります。 「思われる」「求められている」「販売されている」などといったように、他に働きかけることを表す他動詞に「れる/られる」がついた表現で…
アスペクト 皆さんがブログを執筆されるとき、そう、たとえば動詞を使って、一つの文の締めくくりを表現されているとします。 「走る。」「食べる。」「買う。」、確かに自分が書いている言葉なんだけど、妙に、何だかしっくりこないなと、感じられたことは…
たったひとつしかない係助詞 「は」 わたしたちが日本語で文を書こうとするとき、その語順は比較的自由に並べることができます。 英語の場合ですと、主語は原則として必ず文頭に置かれ、それに合わせてbe動詞や一般動詞の選択がされることになります。 つま…
コンテキスト依存型 前回、ご紹介した奥津敬一郎(著)「(ボクハ ウナギダ)の文法」について、今回も少しだけ考察していきたいと思います。 奥津氏のこの著書は1978年に初版が発行されて以降、増版が繰り返され、文法書としては異例のロングセラーとな…
格支配の例外 日本語の文法には、辞書のレベルでは決定しきれない例外が存在すると言われているのだと、前回のブログ記事で紹介しました。 繰り返しになりますが、たとえば、下記のような動詞における格支配の例外を見て頂きたいと思います。 Ⓐ鯛を(刺身に…
必ずでてくる例外 「日本語学の教科書」と呼ばれる、いわゆる文章教本をいろいろと読み漁っているうちに気づいたことがあります。 それは、日本語の文章論や文法の定義なんていうものを究極の部分まで細かく突き詰めようとしても、明確な正解なんてものを掴…
縦と横で織りなされるセンテンス 日本語のセンテンスは単文と複文に分けられるのですが、述語がひとつの文を単文、二つ以上の述語が組み合わされた文を複文だと捉えて問題はないと思います。 Ⓐヒロシはウワサを聞いた。 という文をひとつの単文だと捉えた場…
「です」と「ます」の2種類しかない ブログを書くとき、文体を統一させるために丁寧形で書くのか、普通形で書くのかを私たちは選択しなければなりません。 いわゆるデス・マス調か、タメ語調か、どちらで書くのかといった違いといってもいいでしょう。 小・…
最後までとどく 少し長めの、伝えたい内容を区切らずに続けて1文にまとめたいとき、「中立法」を使って接続表現するという方法があります。 「あります」というよりも、どこの何に出ている文章を読んでも必ず出てくる表現方法なのですが、極論を言えば「中…
こんな日本語はありませんよ 戦時下、兵役していたある国語学者が所属部隊の統率方針を読んで、「こんな日本語はありませんよ」と部隊長に直接訴えかけたそうです。 当時としては珍しいエピソードで、その記録は軍部に今も残っているといいます。 部隊に掲げ…
新たな情報 助詞「ハ」が承ける言葉は、すでに知られている既知のもの、助詞「ガ」が承ける言葉は未知のものであると、国語学者のパイオニア的存在でもある、文学博士の大野晋氏は説かれています。 Ⓐ花は咲いている といえば、すでに「花」は話題に上ってい…
読みにくさの魅力 明治期の近代以降、とくに戦後の現代において、欧文脈というものが日本語の文章に大きく影響を与えることになります。 欧文脈とは、つまり「翻訳調」と言い換えていいと思いますが、それは、あたかも英語などの欧文を翻訳したかのように感…
文字通りの意味なんです 文章表現というのは、究極の「自問自答」であるとよく言われます。 よく誤解されるのですが、これは「自分が書いたこの文章は、これで本当によかったのか、何度も何度も確認してみるべきではないのか。?」といったような、ストイッ…
「何を言ってるのか わからない」の「何」 文章(テキスト)を「意味的に、1つのまとまりをなす文(センテンス)の連鎖である」と定義付けするなら、まず、そこに必要となってくるのは「結束性」です。 文連続としてつながれた結束的なテキストには、テキス…
前提と含意 前回、全体をまとめ上げる役目を果たす文(センテンス)が文章(テキスト)の構成要素のなかに存在することを示し、その最も有効な例として名詞述語文の仕組みを提示しました。 ひとつのセンテンスだけに収まることなく、連文情報をつなぎあわせ…
「文章」と「文」の違いをはっきりと意識する 「文章」というものを定義づけしようとすると、観点として、「文章」の単位性というものが重視されます。 「『メロスは激怒した。』という(文章)は名文なのだろうか」 「新聞の社説の(文)は読みにくい」 という…
吾輩は猫ではある 「吾輩は猫である」という日本人なら誰もが知る有名な作品タイトルがあります。 もしこの作品が「吾輩は猫だ」というタイトルだったとしたら、ここまで国民的知名度を得ることが、果たしてできていたでしょうか。 「吾輩は猫だ」という文は…
パラグラフとトピックセンテンス 文章教本としては、異例のロングセラーとなった木下是雄著「理科系の作文技術」。 物理学者の木下氏が、理科系の若手研究者や学生を対象として、論文、調査報告者といったレポート作成のための最も効果的な表現法を具体的に…
血が通わない言葉 鋭い風刺とあふれるユーモア、言葉の魔術師と呼ばれた日本の小説家、井上ひさし氏。 「言葉を作ったのは人間なのだから言葉は楽しく使うべきである」という持論をもとに、戯曲、小説だけでなく、数多くの文章読本、文章入門書の書き下ろし…
おしゃべりを字で書こう 書店にズラリと並べられている文章入門書。手に取り、パラパラとめくってみると、全容はさまざまなのでしょうが、どの入門書にも申し合わせたように、巻頭の部分あたりで「ある教え」についてページが割かれています。 【話すように…
文章を読ませる推進力 たとえば、ブログなどに記事を書くとします。どうせ書くのなら、その時に、どうすれば、読者をその記事に没頭させることが出来るか。どう書けば、読者を、読んでいるうちにその文章に引きずり込ませてしまうことが出来るようになるので…
常に例外がつきまとう法則 日本語の文法というのは本当に不思議なモノで、辞書のレベルでは決定しきらない例外が、それこそたくさん出てきます。 たとえば、次に出てくる文のような、動詞の格支配の例を見てみてください。 A)鯛を刺身に作る。 ?鯛を作る。…
事態はひとつの時間軸のなかで 今回は、複文の表現形式のひとつである「連用修飾節」の仕組みを紐解いていきたいと思います。 先行する連用修飾節には、それこそ様々な接続方法による表現形式があるのですが、基本的には、後行する文末の述語(用言)に向か…
内の関係と外の関係 前回に引き続き、今回も連体修飾節を使った文章表現にこだわりながら、その本質を分析していきたいと思います。 たとえば、指にルビーの指輪をつけた(女優)という文を例にすると、名詞(女優)を詳しく説明・限定し、修飾しているのが(…
長文を自由自在に 日本語における「複文」、つまり複雑な「文」というのは、いったいどのような構成で作られているのでしょうか。 一般に実用文では1文平均50文字が理想的な文字数だと言われてますので、1文100字を越すような「複文」になると、頭か…
文学の街 作家・井上ひさしさんの講義による「作文教室」が岩手県一関市で開かれたのは、1996年11月15日から17日にかけての3日間のことでした。 このとき、古く美しい建物を活かした文学館をつくろうという、一関ならではの趣旨のもと、「文学の…
状況的枠組みの提示 作家やジャーナリストたちが雑誌記事やエッセイを書く場合、当然ですが、その紙面のスペースは限られています。 限られた紙面の中で簡潔に効率よく読み手に情報を伝えるために、彼らは冒頭の書き出しで、ある工夫をするそうです。 それは…
早く問題の核心へと 仮に、名前も知らない人の論文やエッセイをあなたがこれから読もうとしているとします。 その文章の書き出しの印象は、まさに、初対面の人に会ったときの第一印象と同じような感覚がするのではないでしょうか。 たぶん、「魅力的な書き出…
長いセンテンスは読みにくいか 世に市販されている文章表現の入門書、そのほとんどに、「文は短く、とにかく短く」と書いてあります。 わかりやすい文章を書くためにはとにかく短い文を並べろという「短文信仰」です。 短い文で纏めあげれば明晰な文章が必ず…
無言の読み手 文章表現という「書き言葉」は、会話コミュニケーションという「話し言葉」とは違って、あくまでも書き手からの一方的な伝達手段に過ぎません。 ですが、常に無言の読み手を意識し、対話を頭に想定しながら、言葉が紡ぎ出されていく表現である…