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日本語の3大動詞「ある」「する」「なる」 それは大きなひとつの流れ

日本語の3大動詞と言われているのが「ある」「する」「なる」という3つの形式動詞です。

ほとんどの動詞はこの3つの言葉に置き換えることが出来るのですが、意味によって分類すると、存在をあらわす「ある」、行為や作用をあらわす「する」、過程や状態の変化をあらわす「なる」に大別されます。

また、「が・ある」「を・する」「に・なる」といったように、「が」「を」「に」という3大格助詞がそれぞれの動詞に綺麗に当てはまる構造になっているんです。

じつは、この3大動詞を大分類のテーマとした珍しい一冊の類語辞典があります。

角川書店 類語新辞典

(そこにある「自然」)・(人が行動を起こし、する「人事」)・(その結果生み出される、なる「文化」)というように「自然」「人事」「文化」の3つにまず大分類され、さらに十進分類方式で細分化され体系づけられるという方法がその辞書ではとられているんです。

3大動詞がカテゴライズのベースになっているとはいえ、当然、辞書なので名詞や形容詞も含まれていて、この世の森羅万象が整然と並べられ、ひとつの世界が構築されているんですね。

国語研究家の浜西正人氏によって企画され、国語界のパイオニア的存在である大野晋博士の協力を得てこの辞書は編集されました。

作家の井上ひさし氏も、生前、この辞書をよく使われていたらしく、ただ流し読むだけでも十分楽しめる辞書だとエッセイによく紹介されていました。

それぞれの単語には文例が添えてあって、文脈のなかでその単語の意味が考えられるように構成されているんですね。

類語辞典の良いところは、単語が意味上の類縁性によって区分され整理されているところです。

個々の単語は、あくまでも独立した存在ではあるけれど、その近隣の、類縁性の濃い単語と相互に緊張関係を保ち、時には重なり合う領域を持って、互いにささえ合い生きて働いています。

類語辞典というのは、関係の深い意味、対照的な意味を持つ語を集団化させ、人が心のなかで無意識的に行っている比較対象を明確な形でなしうるように提示された構造となっているんです。

なので、その語を隣接する言葉と比べることで、文脈のなかの用語として適格となっているかどうかを思案することが出来るんですね。

たとえば、【聞き流す】という語の場合、「大切な話を聞き流してしまった」というのは厳密には不適格で、「大切な話を聞き過ごしてしまった」【聞き過ごす】とすれば自然な文脈なんだと理解することができるように、【聞き流す】と【聞き過ごす】は並んで提示されているんです。

このふたつの語が辞書のなかでどのように位置づけされているかというと、まず大分類(人事)、中分類(行動)、中々分類が(見聞)、最終的には小分類(聴取)のなかに並んでいます。

人事 ― 行動 ― 見聞 ― 聴取 【聞き流す】【聞き過ごす】

人が見聞するときの行為のひとつである「聴取」、そこに集まる言葉は耳で聴きとるという概念に関する言葉でカテゴライズされているはずです。

この世の森羅万象に存在する言葉のなかで、ふたつの言葉が、どの位置に体系づけされているのかを解釈することができる構成で作られているんですね。

身も蓋もない言い方をすれば、ほとんどの物語はこの3大動詞をなぞった組み立てになっているような気がします。

ある場所に、ある主人公がいて(ある)、なにがしかの行動を起こし(する)、その結果、何かが変わっていく(なる)。

自分が今調べている言葉が大きな流れのなかでどこに位置付けされ存在しているのか、そんなふうにちょっと意識してみることで、また何か新しい発見があるのかもしれません。